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法律トピックス

住宅ローン控除の改正 (2022.06.09)

令和4年度の税制改正大綱によって、住宅ローン控除(減税)制度の内容が大きく変更されました。

最大の変更点は、住宅ローンの借入限度額と控除率についてです。

 

住宅ローン控除(減税)の制度概要

 

住宅ローン控除(正式名称:住宅借入金等特別控除)とは、国民の住宅購入を後押しするべく、金融機関で住宅ローンを借りる際に支払う金利の負担を軽減するために設けられた減税制度です

令和3年9月30日までの要件では、住宅の建築・購入・リフォーム等の資金を住宅ローンによってまかなった場合に、その住宅に居住を開始した年から10年間に渡って、年末時点での借入残高の1%を所得税の額から控除(所得税から控除しきれない場合は住民税の額からも一部控除)されました。

 

 

改正後の住宅ローン控除の内容

 

令和4年1月1日以降に住宅の取得・居住・リフォーム等を開始した方の条件は、次のように改正されています。

・住宅ローンの控除率:1%⇒0.7%

・控除期間:10年⇒13年

・所得制限:3,000万円以下⇒2,000万円以下

・床面積要件:50㎡⇒40㎡
(所得要件・取得要件あり)

 

控除率はこれまでより低くなりましたが、減税の適用期間や所得制限を緩和する等、より広く住宅ローン控除を利用してもらうための施策が盛り込まれています。

参考:財務省サイト 『住宅税制に関する資料 住宅ローン控除の見直し(令和4年度改正)』

 

改正の主な要因として次の2つが挙げられます。

①2050年カーボンニュートラル実現に向けた措置

②会計検査院の指摘への対応と当面の経済状況を踏まえた措置等

参考:国土交通省資料『国土交通省における地球温暖化緩和策の取組概要』

 

①2050年カーボンニュートラル実現に向けた措置

 

政府が打ち出している「長期エネルギー需給見通し」と「地球温暖化対策計画」における国土交通省の施策に次の2つがあります。

・建築物の省エネ化

・住宅の省エネ化

 

この中で、一定以上の省エネ効果が見込まれる改修工事に対する支援、ZEH等に対する支援としての税制優遇を盛り込んだかたちです。

 

【住宅要件の概要】

認定長期優良住宅

⇒長持ちする構造や設備、長く住めるような維持保全ができ、バリアフリー性、省エネ性、耐震性があるなどを満たした住宅です。

認定低炭素住宅

⇒二酸化炭素の排出を一定以下にできる省エネ性の優れた住宅です。

ZEH(ゼッチ)

⇒「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略です。

高断熱などで省エネルギーにして太陽光発電による電気を消費することにより、住宅のエネルギーがネットでゼロになる住宅を指します。

省エネ基準適合住宅

⇒ZEHの太陽光などの電気を自分で作り出す部分はないものの、省エネ性の優れた住宅のことを指します。

 

 

②会計検査院の指摘への対応と当面の経済状況を踏まえた措置等

 

控除率が1%⇒0.7%と下がり、代わりに新築住宅に関しては控除期間が10年⇒13年へと延長されています。

これまでの所得制限が3,000万円とかなり高かったこと、住宅ローンの控除割合1%を下回る割合が高かったことなど、端的に言えば富裕層の税制優遇制度となっており、本来の住宅ローン控除が必要な所得層向けに水準を適正化したとされています

 

【改正後の住宅ローン控除の主な要件】

 

これまで既に住宅ローン控除適用されていた人は?

 

今回の改正前にすでに住宅ローン控除の適用を受けていた人は、今回の制度改正の影響はありません。

従来からの、控除率1%での適用となります。

 

今回の改正で有利になる人は?

 

控除率や所得限度額が低くなりはしましたが、控除年数の拡大や床面性の制限等の緩和もあり、一般家庭の多くの方にとってはこれまでと大差ない、またはむしろお得になる方が多い改正となりました。

ファミリー層だけでなく、単身者または2人暮らし用の広さの住宅にまで適用範囲が広がったのは、今後の住宅ローン控除制度の利用を後押しすることに繋がるでしょう。